2010年7月25日日曜日

「八月の魔法使い」石持浅海

8月15日午後、役員会議室と総務部長席だけの話。

妻を台所で転倒して下半身不随の数年後に亡くし、定年を翌月にした総務部係長、 海外出張中に妻を事故死させた企画部(マーケティング)課長、 企画部の女子社員と婚約中の経営管理部の主任。

 社内結婚した三人が主役だが、場所、時刻、登場人物を限定した会社ミステリ。

 四文字カタカナの大手洗剤メーカーだが、お盆休みの本社はまったりしていた。

 取締役らの暇つぶしのような販促会議が社長が列席で最上階の社長室となり役員会議室で進行中にPPTに異変がおこる。

 無能な総務部長はさておき、総務部係長と経営管理部主任の推理。 密室のような役員会議室には企画部課長とその部下で婚約者がいる。

 「扉は閉ざされたまま」での成城のペンションの二階の密室の客室で友人が殺されたままの24時間を数少ない材料で推理するのに近い状況。

<推理の問題点>
p271の最初の数行、サラリーマン作家としての推理の限界があって、「トップならわれわれと違ってそんな気遣いいらないだろう」という予断が思考を曇らせている。

p276あたり、推理に枠を設けるためだろうが、「次期社長は別分野の役員から」という因習はわかるが、7人の役員から3人退場する異常事態なら例外として社外IRでも社内向けモチベーションも十分に可能だろうし、一部上場企業でそれでも「習慣に従う」などと言えば東証でも経済界でも笑いものだろう。

p282 パズルとしても最も弱い部分。 主任は恋人のケータイの実況中継で、係長は盗聴器を役員室に仕掛けた上、無線から音声認識文字変換ソフト(2010年には実用化してない)でお互い「都合のイイところをズルしてる」のが問題だ。どうしょうもないのだろうが。




 最後は悪い人らが自滅合戦したあげく魔法使いマーリンから若きアーサー王が導かれるイングランド王国のような結末。卑怯な大臣らはまだ残っているが、バランスのいい王様(社長)と王女がいる。
 
 40代前半の石持氏がどの会社のどの部署にいるのか知らないが、サラリーマンの童話だろう。

会社組織がいまいち分かってない若い人や企業経験ない人にお薦めです。

2010年7月18日日曜日

パワースポット

景気が悪くなるとこういう現象が流行るものですか。
 先月も経営コンサル会社の視察旅行なのにわざわざ3時間は遠出して長野県伊那市にある分杭峠という「磁場ゼロ」という場所に行って、90分何もせずに滞在した。細い湧き水だけの何もない場所。「気を感じる」「肩のこりが消えた」という経営者のいる中ひたすら退屈な時間。若い高学歴のコンサルもこういうのは弱いのですかね。

 日本列島の二つの大断層がぶつかり合ったフォッサマグナに位置した中央構造線上には諏訪大社、伊勢神宮が・・・だそうです。

 それを言うなら自宅の近所にもあるような・・・西新宿の十二社通りはもっと不気味なパワースポットではないだろうか。

 旧淀橋の高層ビル街とその周辺のタワーマンション群、それと対照的な幡ヶ谷や初台などの下町住宅地、まさにその断層が十二社通りだ。
 面するのは、江戸時代からの心霊スポットたる新宿中央公園の熊野神社と、それに対する去年閉鎖した十二社温泉。こんなところに天然温泉もおかしいし、整備された道路の割には爽快感とは真逆の湿度の多い昼なお暗い通り。

 自宅と会社を歩くには最短距離なのだが、あまり非合理でないつもりだったが、最近はほとんど歩かなくなった。

 (写真は、分杭峠へ行くには、路肩が悪くて大型バスから途中から乗り換えないといけないマイクロバス車内から)

2010年7月13日火曜日

六本木の午後

昼から西麻布でコンサルと焼肉屋で会食。一本入るとだいぶ閉店が多い。

時間が空いたし新宿戻るのも億劫で本屋とスーツ注文それに散歩。
夕方はグランドハイアットで外資系保険。もう10年以上だが何の契約もないが、マメに顧客企業や面白い案件を紹介してくれる。まあ相手側から契約もらっているのだろうが助かる話。

また時間が空いたので森タワー50階で恐竜展を見る。

 そのまま49階のアカデミーヒルズに行く。ただし二階建てエレベーターなのでいったん下まで降りないといけない。

一橋大学大学院の楠木建教授「ストーリーとしての競争戦略」
http://www.academyhills.com/school/detail/tqe2it00000c7u67.html

途中まで本は読んでいたが、著者に直接に本に沿った話をされると理解力が違う。
というより飛ばし読みがしやすくなるので読むスピードがあがる。

●スタバ  第三の場所 効率より雰囲気。テンションが高くて時間の余裕ある客を選ぶ。銀座、大手町などを優先。わざと待たせる。直営店のみ。
●マブチモーター  標準化したモーターのみ。客の要望は無視。それによる効率、低コスト、季節指数の平準化。 玩具メーカーから家電などへの横展開。
●アマゾン  ECサイトの常識を無視した自社での在庫と自前の物流センターへの巨額投資。

など当初は周囲の反対を受けるような矛盾した施策で、結果的に物語性のある事業戦略となっている例を述べながら、ストーリー戦略の重要性を指摘する。

 いままでスカパーのBBT757で何度も受講したが、生で聞くのは違う。社会人に対してどんどん質問して平気で否定する講義は学生相手よりも厳しいかも知れない。

 仙台のやりすぎコギャルVSビッグスリーの究極のジャストインタイム は笑える。 TOYOTA幹部も驚いた数秒以内のITとクレーンを駆使したカンバン方式を大真面目にデトロイトでやっていたという。
 ただし著者も言っていたが、講義の面白さに比べて、本は少し冗長だ。


2010年7月11日日曜日

「名探偵の掟」

 さきほど宅配レンタルDVDで見終わった1巻から5巻。
http://www.tv-asahi.co.jp/meitantei/
 若い男女二人づつと中年刑事だが、男二人は草食イケメンだが、女二人は骨太の雑食というか。。

 東野圭吾がミステリへの皮肉をこめて、制約や約束や硬直性を、メタ小説すれすれに書いたもの。 こちらもシリーズは三冊あったが読んだのはもうだいぶ前で忘れていた。 うちにもう10年も通ってもらっている家政婦さんはナースの娘とともに東野ファンで読んだらほとんとあげる。 何か家政婦とかって書くと本格推理っぽいのだが、単に週1-2回だけです。

 このテレ朝ドラマ版はキャスティングとシャレがよかった。  企画会議おそらくは苦し紛れのヤケクソ案だらけだったのでしょうが、とても羨ましく、楽しそう。少しは力になったのか。? せひこれをメイキングしてほしい。それをビジネス指南DVDで「究極の新製品開発プロジェクト」とか、お隣のアカデミーヒルズの講演にでもできませんか?

 確かに・・・いきなり早くも第二話からマンネリ感漂うだけに、10話も持つのかと思ったがなんとか間に合いました。ね

 ネタバレだが、おそらく一番評判の悪かったであろう中盤作品が、私には面白かった。 筒井康隆の時代物?で、信長死去を電話で聞いた秀吉が山陽新幹線で京都駅に向かうシーンがあった。その二点以外は普通の歴史物という、反応が真っ二つに分かれる短編。(本編ではaribai)

 私には面白かったがミステリ興味ない人にはあんまり向かないでしょう。せいぜい第一巻だけで十分かも。 先週からの私のようないまいち体調不良な、積極的になりきれない人にはちょうどいい生ぬるさ。でした

 でも、松田翔太が好きな人にはお薦め。 55.8歳オヤジの♡はご迷惑でしょうから自粛しています。 後半は少しやりすぎ演技でしたが、父を思わせる表現と雰囲気は多い。たまらないです。反射神経よさも、表情の演技も心の奥まで気持ちいい。 
 「ハゲタカ」兄の暗さと比べて、訓練+才能+遺伝の成果でしょうか。でも次男が何かべつに訓練されたとは聞かないので、これはまったく条件が同じなので、これだけでは論理的ではない、、つまり人の成長なんてどこまで偶然なんでしょうか。

 こういう世襲はいいけど、それにしても今日の結果はどういうものになるのでしょうか。
 

2010年7月2日金曜日

アフレコ

また映画「浅草堂酔夢譚」の話だけど。
今日から新宿にある録音スタジオでアフレコがありました。
撮影後に編集された画像を見ながらの出演者のセリフ入れです。

 とりわけこの映画はワンカット前提だけに「音は後でいい」で当日というか05/05浅草公会堂ですべて撮影されています。色とかフレームとか揺れなどの画面の微調整はともかく、役者の演技はもうどうにもならない。「過去すべて肯定」の世界です。

 二ヶ月後に、それまで悶々とした?監督にとってたぶん唯一のリベンジの場が本日です。
「はい戻して、セリフ××から」「じゃテストもう一度」「セリフ少し変えて、こう××」「よかった、でも」「・・・!」

 自分の画像を見ながらセリフを入れていくのは難しいものなんですね。 アフレコとか、外人俳優かアニメの口に合わせるだけじゃなくて、数ヶ月前の自分自身の演技に合わせるのがこんなに難しいいのか。。   さすがにアニメ俳優はまあ器用です。映画やTV慣れの俳優が苦戦。舞台は感がいいですね。
 荻野監督が言うように「アフレコは面白いのでぜひ」そのままでした。