2009年12月20日日曜日

「Another」綾辻行人

「Another」綾辻行人

これは今年のミステリの最高じゃないかな。
 (多くのランキングでは「新参者」東野圭吾が一位だったが、技巧としては素晴らしいが、読んでの感動は少ない)

 ホラー部分はスティーブン・キング的な、立証できないがその限界的な小世界では破綻なく、十分に怖い。 ミステリ部分では意外な犯人で期待してないだけ驚かされる。(画期的というのではないが、というかミステリではだんだん難しくなってきているし、組み合わせでマニアでも騙される。これはすごい)
  さらに後味もいい。
 ただし、いくらなんでも死者が多すぎで、世間の目との乖離がどう考えても不自然なのだが。こんな中学が何十年も存続することや通う生徒がいることが不思議。 もう少し内部の者の疑惑と、外部の無関心とのギャップで生まれる焦燥感があると、もっと共感したのではないかな。惜しい。でも楽しかった。



 先週か今週に読んだ こういう倒叙トリックでは、折原一の「倒錯」シリーズが面白かった。 でもミステリ初心者には向かないかも。ね



乾くるみ「カラット探偵事務所の事件簿1」は 題名で敬遠していたが最後が切ない。 少年少女向けなんだろうけど、マニアでも最後は騙される。
 ここでの途中の短編はまあまあで、大した事件も謎解きもないけど、最後はやられた。 「イニシエーション・ラブ」でもないけど、もう一度読み返してしまう。 伏線もそれなりだし、何より最後のページが気心地よい余韻がある。  この題名の一部がトリックだ。
 素人探偵事務所での、まったりした雰囲気が加納朋子「螺旋階段のアリス」に近いものがある。