2010年1月5日火曜日

「探偵物語」松田優作 薬師丸ひろ子

 加藤和彦といえば、フォーククスセイダース「帰ってきたヨッパライ」とかサディスティック・ミカ・バンドが有名だ。

1980年初頭の「うたかたのオペラ」「ベルエクセントリック」などを愛聴していた。 すこし自慢だが1979年に発売された初代ウォークマンを電車で聞いていた。 SONYプレスマンという記者会見録音用のカセットレコーダーからマイクを外してステレオにしたもの。 実はそれほどイノベーティブな製品化ではなかったのでないだろうか。 どちらも分厚い文庫本ほどの重量があった。

それらの絶頂期の映画音楽に「探偵物語」があった。

主題歌は加藤和彦の作曲ではないけど、全体の音楽監督で、すなおに素晴らしい。

女子大生とさえない中年探偵、の赤川ミステリらしい展開だけど心に残る映像と音楽だ。なにか最近ついある状況で見直した。(これは現在進行形か未来形の話)

なによりも松田優作と薬師丸ひろ子とのほぼ最終での探偵アパートでの長回しシーンでの二人の演技力のすばらしさ。 田園調布お金持ちの女子大生と、貧しい探偵との会話が10分は続く。何度見ても一部の瑕疵もない。


「ひとりで、さびしくないんですか? わたしいつもひとりでさびしかった!」 
「ひとりでいてさびしくない奴なんていないよ。だけど甘えちゃいけない時だってあるんじゃないか」
沈黙
「帰ります」
「・・・・」
「帰ります!」   (女子大生はまだ甘えてる。 ストイックに探偵は耐えている)   


(主題歌)


それから最終の成田空港につながる。

ここからのあまりに有名な二人の演技はもう書く必要もないだろう。

貧しい中年探偵と10代の女子大生お嬢様とのはかない恋。 いいとは思うが、こんな私にも、松田優作にも、二度とない想いだろうね。 いつまでも大切にしたい経験だが、薬師丸ひろ子がエスカレーターが降りるのを見守るように、もはや再現はいらない。 でも忘れないよ。(ここは過去の話)

渡米した女子大生が前向きな人生を進んだことを祈る。