2011年5月3日火曜日

一年半のストーカー

「 秋葉原耳かき小町殺人事件 」ワニブックスPLUS新書 吉村 達也
 
・殺害犯人     吉川こと林貢二(千葉市美浜区幸町2丁目)41歳会社員
・被害者 まりなこと江尻美保と祖母(港区新橋)21歳
・山本耳かき店  http://www.yamamotomimikaki.com/

2007/12/25 秋葉原山下耳かき店面接。まりなになる
2008/03/05 まりなブログを始める(林が通い始める)
2008/06/08 加藤智大による無差別殺人事件(林が常連客に)
2008/11/00 まりなが新宿店への応援にも林が同行しはじめる
2009/04/05 林を出禁にする
2009/08/03 林がまりなと祖母を殺害
2010/11/01 東京地裁で無期懲役

 吉村達也は200冊以上というすごく多作な推理作家でマジックにも趣味がある。ミステリは何冊か読んだが多作なほど悪くはない。どことなく元マスコミらしい作風です。

 この本は山下耳かき店秋葉原本店公認のまりなのブログ(著者が事件後すぐ保存)と産経新聞の法廷ライブWEBで構成。 店には見学してるようだが直接の取材はない。なので犯人像がよく見えてこない。 偏見のあるこんな写真ぐらい。
http://2009.itainews.com/archives/2009/08/post-1099.html
http://jiken.is-mine.net/MimikakiSatujin/0.html

 林は最初は優良客だった。ただし、まりな しか指名しない。 ブログへの客コメントへのまりなの返答に、林にだけ・・ニャ。とかを付けているのからどうも林は勘違いモードに入ったらしい。p69
 しかしまりなはその頃からすでに林を嫌っていた。 同僚メイドの検事への証言「いいこと悪いことを話しても、いいことしか聞かない。困った人だと言ってました」p74

 この時期は、嫌いながらも上客だけに、ついつい下の名前を教えp128 メールを教えp134 だいたいの住所を話してしまうp208  林はますます勘違い「オレは他の常連とは違う」が激しくなる。

 土日8時間も予約して「耳かき」してもらうなど、入り浸りの異常な来店頻度と滞在時間で、彼女にさまざまな高額なプレゼントを贈り、それにともない増長して、店内で大声を出しp142、手を握ろうとしp164、同伴や店外飲食を誘いだすp186。  彼女が遠い他店での応援にまでついて行き始める。もはや林の生活も変わり経済的にもおかしくなっただろう。

 ---林貢二の脳内回路には、現実の出来事をすべて自分にとって都合のいいプログラムが構築されていたのかもしれない。嘘をついているという認識がないままに、現実と理想的な仮想世界の区別が自分でもつかなくなっている脳--- p190 


 この店の店長は自分では出禁宣言していない。 まりな本人の「もう来ないでください」 「無理です」 だけではストーカーには通じない。

 ---客に対する出入禁止は、店長から正式に通告するもので・・・店長責任で明確に告げるべきだった--- p196
 

 その後で自己中心的に、林は謝罪と和解もどきのメールを何通か送り、それが効果ないとなると、出勤途中で出待ちをし、尾行して自宅をつきとめる。 そしてナイフ2本とハンマーを持って祖母と本人を殺害した。

 著者の、前半の異常についての部分と 後半での ---恋愛感情でなく人形への愛着だ --- との結論は、著者の結尾での主張の ---裁判官や検察官の偏見だ--- よりもさらに間違っている。 著者は私と同年代で、林よりも一回り以上の年上だからおそらく「年齢も倍の男がまさか」が間違いだ。 反論してください。


 死刑でなくてよかったと思う。 江尻美保さんの生きた歳月以上に監獄で苦痛と後悔をしてくれ。



---は著者の感想を引用したもの。「 」は裁判上の証言の引用。( )は私の感想。