男性週刊誌で、記事アンカーとか編集部の雑務をしている取材記者を志望する29歳の女性。
妊娠4ヶ月ぐらいの大手企業に務める夫と幸福に暮らす29歳の専業主婦。
調査する粘着質の独身女性とあっさりした疑惑の妊婦。 同年の二人の女性のサスペンス。
他には女性の上司の編集デスクと植物系を先取りした彼氏、妊婦の母と妊娠友人、
さらに外見も性格もKYな肥満女性とそのSEでオタクな彼氏、小柄でさえない外見の大手企業のシステム保守をする中年男と痴漢冤罪ゲームする女子高生、近所を徘徊する色ボケ老人とその息子。
肥満女性と中年男と色ボケ老人の三人が被害者。
私にはどれも共感できない登場人物だらけで、もちろん妊婦の日常とか心理はまったくわからない世界でもある。
2006年初版という微妙な時期、女性ミステリー作家への私の偏見とあいまって、大丈夫かな?というメタな読書不安が続く。これもサスペンスだろうか。。
「もしかして性別の叙述トリックでは?」
「ここまで疑わしい人物が犯罪するのか?」
「三人の被害者に関係する人物が限られている中でどうやって決着させるのだろうか」
「大丈夫かな? 読み終わって後悔しないだろうな」
新本格推理になれた読者ほどサスペンスある小説かもしれない。 叙述トリックだったのかどうかも最後までわからない。
真相の告白のあとの展開もミステリとしては斬新な処理。
そういう意味で一周遅れに見せかけた、一周ズルしてゴールしたようなものかも。
文庫版ではあたかも「アエラ」にでも出てきそうな著者インタビューが付いている。 ここに虚偽はないけどまんまミスディレクション。 先に読むと余計に騙される。